【書評】「デザインの骨格」 プロダクトデザイナー山中俊治
技術を漉くデザイン
過去の製品デザインを見て、私たちは技術の進歩を見る。
固定電話から、携帯電話、スマートフォンへと。
もっと歴史をさかのぼると手紙や切手、矢文などもそうかもしれない。
技術の進歩を見れるのは、技術者だけのおかげか。
「そうではない。成熟のタイミングを計るデザイナーが、時代を作る技術の
製品化を牽引している」と著者は静かに主張していると思う。
多くのデザイナーは、長くひとつの技術を育てる立場ではなく、むしろその成熟のタイミングを見極める立場にあります。常に進歩し続ける技術と人々の欲望の接点は一瞬。完成度の低い技術は見向きもされず、やっと役に立つようになった技術は、その瞬間から陳腐化し始めます。デザイナーはその一瞬を狙って、アイデアを定着させなければなりません。
「一瞬を狙って」デザインに落とし込まなければいけない。
デザインを固めるタイミングが、早すぎても遅すぎても、
それは技術者があるいは自分が乗せたかった、
そして世間が望んでいた製品にはならない。
ボールがはねる瞬間を捉えてライジングをたたくために、着地点に素早く回り込む。そんなダッシュ力が要求される職業なのかもしれません。私自信はダッシュ苦手なのですが
このダッシュ力が、本当に一瞬なのか半年や1年続くのかデザイナーでない僕には
わからないが、固めるタイミングを得て実行にしないと陳腐なものになってしまう。
デザイナーには日本酒の杜氏のように、円熟のタイミングを見極めるという
「発見する力」が求められているのでしょう。
早すぎず遅すぎずタイミングを制することは、
私の仕事にも通じる肝があり、いままでの仕事のうまくいかなかった理由を
そっと名文で教えてくれる本でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
熊に追いつく。