【書籍】「センスは知識からはじまる」グッドデザインカンパニー代表 水野学
センスは、知識の集積を前提に、最適解を見つけ出す能力である。
たとえば、ビートルズについて聞かれた時に、僕が「すごいんだよ」と言うのと、坂本龍一さんが「すごいんだよ」と言うのとでは説得力が違います。
著者は、世間から見れば、「iD」や「くまもん」のクリエイティブディレクターで
センスのある人と思われている。
その背景には、ひらめきや第六感でなんとなくアイディアを決めているイメージが
ある。
しかし、著者はそれを否定する。膨大なデータから「普通」のことを精度よく最適化
できることが、センスのあることである、と主張する。
知識の集積が、ひらめきの前提である、と。
冒頭に述べた坂本龍一さんの例では、膨大な知識の集積がある坂本さんが説得力をもっ
て「ビートルズ」のすごさを主張することが想像できる。なぜすごいのか、ローリング
ストーンズや現代のJpopやらと比べてどのような点がすごいのか、いくら聞いても湯水
のようにその理由が説得的に述べられることがイメージできる。
ここまできて、2つ考えたことがある、
①まず、この「ひらめき」も、膨大な知識の集積からくるものなので、最近巷で話題
の「コンピューターに置き換えられる仕事」なのかということ。
そうではないだろうと思う。「普通」のことを精度よく最適化することは非
常に高度な知的作業であり、コンピューターにはまだ早い。たとえば、iphoneの製
作は、それこそ既存のガジェットを最適に配置した抜群にセンスあることには反論
はないと思うが、このような製品を世に送り出すのはコンピュータでなく、人間だ
ろう。
製品コンセプトならまだしも、そのような新しいものを生産までこぎつけるのは、
生半可じゃない情熱もいる。そこには人間がいる。
②2つ目は、膨大な知識の集積・詰め込み教育は、「時代遅れではない」というこ
とだ。作者の意見に従うならば、実務や努力をしていないと「ひらめき」は生まれ
てこない。たとえば、いい文章を作りなさいといわれたとき、「あ~お」しかない
人と50音すべてある人では、レベルはまったく異なってくる。前提となる、勉強
や知識の習得は、今後もずっと必要になることだろう。
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くまに追い付く。